2021-11
大腸がん予防のために、歯周病予防を
大腸がんとは?
大腸がんは、大腸の一番内側にある粘膜に発生し、日本人に最も罹患数が多いがんです。
ステージⅡで3年生存率76.1%、5年生存率64.3%という恐ろしい疾患です。
良性のポリープが大きくなる過程でがん化するものと、粘膜の正常な細胞が直接がん細胞に変化するものがあり、次第に大腸の壁に深く侵入し、大腸の壁の外まで広がって腹腔内に散らばったり、リンパ液や血液に乗って、リンパ節や肝臓、肺などに転移したりします。
そして、この恐ろしい大腸がんと、歯周病菌との関係が明らかになってきました。
大腸がんと歯周病菌の関係
横浜市立大学・肝胆膵消化器病学の研究グループは、2018年6月28 日、大腸がん患者のがん組織と唾液に共通した菌株が存在していることを発見しました。
その菌は、歯周病の増悪化にも関与することが知られているFusobacteriumnucleatum(フソバクテリウム・ヌクレアタム:F.n.)という口腔内の常在菌の一種で、多くの人が持っている菌です。
これまでの様々な研究の中で、F.n.が大腸がんの病態や予後に悪影響をおよぼすという報告例が増え注目されていましたが、F.n.が人の腸内から検出されることは少なく、大腸がんでの感染経路はよくわかっていませんでした。
研究チームは、F.n.が口腔内優性菌種であることに着目し、F.n.が口腔内から大腸がんへ移行して原因になっているとの仮説を立て、患者の大腸がん組織と唾液からF. n.を分離して解析した結果、4 割以上の患者で、大腸がん組織と唾液に共通した F. n.菌株が存在していることを発見しました。
詳しい感染ルートは分かっていませんが、今後の大腸がんの新たな治療法、予防法、リスク評価などに繋がる可能性があります。
歯周病を予防しましょう
歯周病は、日本人の成人8割が罹っていると言われる病気です。
今回紹介した大腸がんの他にも、糖尿病、動脈硬化性疾患、肥満、誤えん性肺炎、アルツハイマー型認知症など、様々な病気との関係があります。
歯周病の原因はF.nやレッドコンプレックスと呼ばれる毒性の強い細菌群です。
それは歯垢(プラーク)で繁殖し、歯と歯茎の隙間に歯垢が溜まると、毒性によって歯茎に炎症を起こし、歯槽骨を破壊していきます。
そして最終的には歯が抜けてしまうのです。
歯周病の一番の予防は、歯周病菌の温床である歯垢を歯に付着させないことです。
毎食後、歯と歯茎の間を丁寧に磨き、プラークを取り除きましょう。
また、歯科医院で定期健診を受け、専用の機械で徹底的にお口の中をクリーニングしましょう。
初期の歯周病はほとんど自覚症状がありません。
3ヶ月に一度は定期検診を受け、必要に応じて歯石の除去やブラッシング指導など、歯の健康をトータルチェックする機会を作りましょう。